健康保険料の支払い方式 

DRG方式


 DRGについて                 西澤 寛俊

1.初めに
 DRGとはDiagnosis Related Groupの略であり、国際疾病分類で10,000以上ある診断名をマンパワー、医薬品、医療材料等の医療資源の必要度から、統計上意味のある500程度の診断名グループに整理し、分類する方法をいう。
 その開発の目的は、病院の運営の無駄を省いて、生産性をあげるための病院マネジメント手法の一つとしてであった。即ち、患者に使ったマンパワー、医薬品、医療材料、入院日数、入院費用等のデーターをできるだけ多くの病院から集め、診断名グループ毎に分析し各病院毎に改善点を明確にし、病院を効率的に運営することを目的とした。
 言い換えると、DRGは一般産業界のQC(Quality Control)活動と同じ目的で始まった研究プログラムの成果である。
 ここで明確にしなければならないのは、DRG=包括払い方式ではないという事である。
  DRGを包括払い方式(Prospective Payment System)に用いたものをDRG/PPSという。
 議論するときには、DRGとDRG/PPSを混乱してはならない。

 2. DRGの開発経緯
 米国の病院ではメディケアの発足(1965年)以降、保険の支払いを受ける条件として、医療資源の稼働状況(Utilization Review)や(Quality Assurance)に関するデーターの提出が必須条件となった。
 そのため、病院における医療サービス活動をいかに測定するか、又、産業界で使われているコストと品質に関するマネジメント手法を、医療にそのまま適用できるかどうかが議論の的になった。
 しかし、産業界のマネジメント手法を病院にそのまま適用するという考えは当初関係者の支持を得られなかった。
 そこで、1969年エール大学の研究グループは病院での活動を測定・評価するための基礎となる患者分類から手掛けた。これはマサチューセッツ病院のゴットマン博士が1900年初頭から20年近く研究を続けた手法を引き継いだもので、基本的には患者を何らかの形で分類して治療法を比較・評価する手法を採用した。
 その後、1970年代に入ってからはコンピュター技術の進歩の恩恵を受けて、大量の患者データーを統計的・臨床的に分析できるようになり、比較的均質な治療プロセスの識別や医療の標準化が可能となった。
 このように、DRG作成の当初の目的はあくまでも病院のマネジメントツールの開発だった。

3. DRG/PPSの経緯
 しかし、エール大の研究班がDRGの研究を行っていた当初、病院関係者にはコストと医療の質のトレードオフに関する研究を行うインセンティブは殆どなかった。
 その理由は、当時の病院は出来高払い制が基本でコストの大小に関わらず支払いを受けることができたからである。一方、医療費高騰に危機感を感じていた連邦政府は、医療費抑制を目指した包括払い方式に強い関心を抱いていた。そこで、メディケアにおける新しい支払い制度を検討するためにHCFA(米国医療財政庁)がエール大学のDRG研究を援助したわけである。
 政府の介入が必要となる背景には、医療界では「コストと質の情報に基づいて機能する市場」が欠落していて、産業界で一般的な「市場のメカニズム」が働かないことがある。いわゆる「市場の失敗」である。消費者は医療サービスの価値や質を評価するための情報を持ち合わせないうえ、多くは何らかの保険に加入しているので全額支払うことはない。つまり、医療の消費者は情報不足で医療サービスの消費量を最小限にしようというインセンティブが欠如しているのである。
 しかしながら、DRG/PPSを導入すれば病院の支払限度額が確定し一定のコストよりも高い水準で病院が医療サービスを提供するのを抑えることができる。又、支払金額に上限ができると医療の質の低下が懸念されるが、ピア・レビュー(Peer Review)で担保される。
 DRGに基づいた包括払い方式はこのような背景で作られたものである。

4. DRG疾病分類法
【第1段階】
  ICD−9の10,000以上の診断名を、大きく25に分類する。これをMDCs(Major Diagnostic Categories)と呼ぶ。
 まず、主診断名(Principal Diagnosis)をMDCsに分類する
【第2段階】
 手術室を必要とするか否かで、外科と内科に分類する。
 外科の場合はその手術の種類で更に分類し、内科の場合も新生物、その他の内科疾患等の主診断名で分類する。
【第3段階】
 患者の退院データーから医療資源の消費パターンを統計的に分類するために、患者の特性に注目して治療プロセスを検討する。
 具体的には、各MDCコードごとに患者の全データーを集め、統計的に医療資源の消費パターンを解析し、これを臨床医が医学的見地から検討する。
【第4段階】
 入院の原因となった主診断名以外で、患者の治療プロセスに影響を与えた合併症や併発症(Complications Comorbidities)を調査する。
 これを副診断名(Secondary diagnosis)と云い、どうしても他にデーターがない場合は年齢や転帰を指標として使用する。
 以上の一連の段階を経て「成果物」の定義が得られる。第1レベルは臓器別、第2レベルは手術室を必要とするか否か、第3レベルは主診断名、術式、その他の指標に基づいて分類される。

5. DRG/PPSについて
○開発ステップ 
  DRG/PPSの開発は患者のデータと病院のコストデーターを集め、分析することから始まる。
 一般的には、20〜30病院から10万人程度の患者の入退院記録と患者別のコストデーターが揃えば理想的な分析ができるとされる。
 当然ながら個々のデーターの正確性が必要であり、ポイントとなるのは、患者の診療記録やコストのデータをコンピューターを使って分析し、病名グループごとのコストの平均値を算出する作業である。
○支払い金額の決定方法
  DRGの支払い金額は@相対的ウエイト、Aベースレート、B各病院のケースミックス・インデックス、Cトリムポイント、D調整係数を自動計算するソフトウェアを使って患者データーとコストデーターからコンピューター上算出される。 
 基本的には、ベースレートとそれぞれのDRG項目の相対的ウェイトによって決定される。
(1)相対的ウェイト
 相対的ウェイトとは通常、典型的なケースの平均が1.0の単位をもつ数値のことである。
 言い換えると、相対的ウェイトとは個々のDRG項目の医療資源の相対的必要度を示す。
 例えば、DRG番号○○○が0.5の相対的ウェイトを持つとすれば、相対的ウェイトが1.0である平均的DRGよりは医療資源の必要度が半分しかないことを意味する。
(2)ベースレート
 ベースレートとは平均的患者を処置するために要する平均的コストのことである。DRG○○○の価格=ベースレート×DRG○○○相対的ウェイト

6. 米国におけるDRG/PPSの効果
1) 医療費の伸び率の鈍化
 メディケアでは1980年から1990年の10年間で年平均180億ドルの医療費が削減され、年間の入院患者数も3,500万人から3,100万人に減り、医療費の伸び率が対前年比で平均14%から3%に下がった。
2)平均在院日数が短縮された。
3) 1983年から1988年の5年間で病院数が184、ベットが約6万床、病床利用率も約8%減少した。
4)@ナーシングホームへの転院、A在宅ケア、B外来サービスの比率、C日帰り手術が増える一方、DICU,CCUの利用率も増加した。
5)退院後6週間以内の死亡率は変わらず、再入院率は微増した。
6) 病院ごとの治療水準の差が明確になったので、良い治療の方法(Treatment Protocol)が普及し、医療の質が向上するきっかけとなった。
 
 更に興味深いのは、DRG/PPS導入後、米国の病院マネジメントの主流がマーケティング発想中心(いかに数多くの患者を集め、請求漏れを減らすか)からコスト管理中心(いかに一定のコストで患者の満足度を高めるか)に変わったという事である。

7. DRGの意義
(1) 医療の効率化と質の向上に役立つ
 病院管理者は、他の病院のコストと自分の病院のコストを比較することで、どこを改善する必要があるのかを知ることができる。平均値に比べて異常に高いコストの原因を診断名グループごとに、費用の要素ごとに分析し、的確な対策を打つこともできる。
 又、平均在院日数も診断名グループごとに比較することも可能である。こうした定量的な分析を行えば、医療資源を科学的に配分することが可能となる。
(2)医療の国際比較が可能になる 
 DRGは国際疾病分類であるICD-9、 ICD-9・CMを診断名や治療名の国際的なスタンダードとして使う。そのため病院のコストパフォーマンスや支払金額について、他国との比較ができる上に、患者の記録、コストの分析についても国際的な基準に沿ったデーターを作る事が可能となる。 


資料T :DRG/PPSを作成するのに必要なデータ一覧表

下記項目についてのデータを指定の年度について磁気テープあるいはMOディスクなどの媒体で提供してもらう。

【患者情報】
・ 病院コード  ・入院日齢
・ 患者番号   ・退院日齢
・ データ番号  ・性別
・入院日     ・生誕時体重
・ 退院日    ・転帰:コード表あり
・ 入院日数   ・主診断(ICD・CM)
・生年月日   ・2次診断(ICD9−CM):複数ある場合には最大15まで
・ 入院年齢  ・治療コード(ICD9−CM):複数ある場合には最大15ま        で
【病院費用(1.〜11.までの項目ごとに集計する)】
1. 日常費用(病棟などで入院のために使われた費用)
・ 看護婦の給与費及び福利厚生費   ・清掃費
・給食用費用            ・廃棄物処理費
・ 看護サービス用被服費    ・ベットの保守点検費
・入院患者の院内移送費    ・ベットの減価償却費
・ 洗濯費
2. 経費・事務用品費    ・車両のメンテナンス費
・ 水道費         ・旅費、交通費
・光熱費          ・通信費
・ 書籍費         ・税金
・ 会議費         ・保険料
・建物のメンテナンス費・建物の減価償却費
3.医師の費用
・ 病棟の医師の給与費および福利厚生費
4. 集中治療室の費用
・ 医師の給与費および福利厚生費    ・備品費(1年以内で消費するもの)
・ 看護婦の給与費および福利厚生費  ・医薬品費・ その他の職種の給与費および福利厚生費・機器の保守点検費
・装置の減価償却費              ・その他の集中治療室に関係する費用・消耗品費
5. 手術室費用
・ 医師の給与費および福利厚生費   ・備品費(1年以内で消費するもの)
・ 看護婦の給与費および福利厚生費  ・麻酔および手術室用医薬品費
・ その他の職種の給与費および福利厚生費・機器の保守点検費
・装置の減価償却費          ・麻酔費
・ 消耗品費             
 ・その他の手術に関係する費用
6. 医薬品費
・ 一般病棟用医薬品費
7. 放射線関係費用
・ 医師の給与費および福利厚生費   ・備品費(1年以内で消費するもの)
・ 看護婦の給与費および福利厚生費  ・医薬品費
・ その他の職種の給与費および福利厚生費・機器の保守点検費
・装置の減価償却費          ・その他の放射線室に関係する費用
・消耗品費
8. 検査室費用
・ 医師の給与費および福利厚生費   ・備品費(1年以内で消費するもの)
・ 看護婦の給与費および福利厚生費  ・医薬品費
・ その他の職種の給与費および福利厚生費・機器の保守点検費
・装置の減価償却費          ・その他の検査室に関係する費用
・ 消耗品費
9. 治療材料費
・ 放射線および臨床検査関係を除く診療材料費
10. その他の部門費用(1.〜9.に含まれないリハビリなどの部門の費用)
・医師の給与費および福利厚生費      ・消耗品費
・ 看護婦の給与費および福利厚生費    ・備品費(1年以内で消費するもの)
・ その他の職種の給与費および福利厚生費 ・医薬品費
・ 装置の減価償却費          ・機器の保守点検費
11. その他の補助的費用(1.〜10. のどれにもあてはまらない費用)
・ 入院患者用血液透析費       ・装置の減価償却費
・EEG/EMG/EKGなどにかかる費用・消耗品費
・ 医師の給与費および福利厚生費    ・備品費(1年以内で消費するもの)
・ 看護婦の給与費および福利厚生費  ・医薬品費
・ その他の職種の給与費および福利厚生費・機器の保守点検費 



出来高払い制


出来高払い制 「出来高払いとその功罪」

梅ケ枝健一

T)医療費の青天井
 人間が不老長寿を願う以上、この命題はいつか必ず壁にぶつかる。本来、高齢化社会とは喜ばしいことであり、むしろ国民すべてが、個々の人生において最も望ましいことではなかったろうか。
 「なかったろうか」と表現したのは今日の社会経済状態の中で高齢化にかかる医療費(70才以上)は、全体の3割強の約9兆円にのぼり、日本の社会保障費の中での重荷として理想と現実の厳しいはざまに立たされているからである。
 他面では、歯止めのない医療における診断や治療における技術進歩は、もしその有効にして且つ効率的な利用を考えないときにはその費用は青天井になってしまう。従って、一般産業のように技術の進歩を一方においてはコストの低下につなげるような研究を医学の中にとり入れることもこれからは必要になろう。
 要するに不老長寿という個々の生体の寿命が大切か、永遠と続く「いのち」が大切かという倫理面からも医療のあり方が問われる時代になってきたということである。
U)必要な医療、不必要な医療(無駄)な医療と出来高払い
 勿論、必要な医療を実施するについては出来高払いがもっとも効果的である。包括化を行えば、どうしても必要と思われる検査や入院期間、投薬さえも少なくする傾向が生じる。医療というものは一見無駄と思われる検査や治療により、思わぬよい効果を得ることがあるということは十分考慮されねばならない。
 反対に、出来高払いでは、効果がはっきりとしていない治療方法が行われたり、又その治療を行うにおける材料費の効率性を考慮せず、検査、投薬においても予防的、且つ不必要な精密検査まで行われる傾向が生じる可能性がある。ただし、それぞれの病態においてどこまでの検査が必要だとか、どのような治療を行うべきかは一概には決められない。
 こうした矛盾を排除するためにはそれぞれの医療の標準化が必要であり、一つ一つの疾患に対する標準的医療を設定し、医学的に必要と認められるものは社会保障で、個々の患者がそれ以上を希望する場合は個人負担でまかなうという方向に向かうべきである。
 標準医療は、その一定の範囲内では包括化を行い、その中に収まらない特殊な経過をたどる場合は出来高払いとするべきである。例えば整形外科的疾患においては、骨折などでもその程度、年齢、生活環境などにより治療方法や、使用材料に大きな差がでるような場合が出来高払いの部分も必要となろう。
 経験のある医師でなければ行えないような特殊な手術についても同様である。米国におけるDRG方式に近い考え方であるが、出来高払いで残すべき部分もあるということである。
V)現行点数で医師の技術料の評価は可能か?
 医師の技術料を考える場合、経験年数、努力度、技術度などを基準にしても定めようがない。せいぜい大学の教授と経験の浅い医師位の差があれば技術評価ということも容易であろうが一般的には難しい。開業医の場合は患者の選択ということで相当程度の評価が行われている。たとえ料金は同じでも受療する患者の総数から見れればおのずと差が出る。
 眼科の白内障の手術にしても数多く手がけるところでは多くの収益を上げているが、一般的に一日何列位をやるのが妥当か(病院、診療所、医師数により異なるが)を考えると自ら定額性の見直しに問題が出てくる。
 或る手術について定額性とすれば上手な医師にかかれば、早い回復が見込まれ病院の収益も増えることになる。もたもたしている下手な医師では収益が減るということになる。そこに患者や保険者からの医師、医療機関の選択の問題も出てくる。従って現行点数からは特定の機関への受診の初診療や自己負担で差をつけるより方法がないのではなかろうか。
W)医師の自由裁量権と出来高払い
 この事の根本にあることは医師の裁量権を医師のみに認めて患者のそれはおろそかにされてきたことである。医師が自由裁量権を求める時には、必ず患者との契約事項としてその事を明確にしなくてはならない。
 情報公開化、カルテの公開その他から言われている現在の医療状況においては、自由裁量権はあくまで患者さんとのインフォ−ムドコンセントの上に成り立つものであり、自由裁量権を望めば望むほど行われる医療については患者とのインフォ−ムドコンセントが重要になることを自覚するべきである。そして患者の選択として医師の自由裁量権を受け入れて出来高払いの部分を入れるか入れないかを決めるべきである。
X)包括払いは粗診・粗療となるか
 或る疾患にある検査をしなかった、或いはある投薬、治療をしなかった、それは出来高払いから包括医療としたためであるとするのは無茶苦茶な話である。
必要とする投薬、検査を包括して点数を定めるので、その中で必要なことをしないということは今後医事紛争の種になる。 

やるべきことは包括化であってもやって(ただし、不必要に余分なことはやらない。例えば高齢者の毎月の血液生化学検査など)、異常な経過をとるような、急性期病変が生ずれば、これは一般診療と同じレベルの診療をうけることのできるようにするのは当然である。
米国の医師達は最後まで抵抗したが1983年DRGが導入され15年を経た。
出来高払いから包括化され医療規制は強化された。
日本においてもすでに包括化の行われている老人病院老健施設では、昨年の点数改正では上昇率を一般の3.6%より低く2.0%にとどまっている。この事からしてもDRGが制限医療を目的としていることは明らかである。
DRGにも長所と短所がある。DRGで非効率的な部分については出来高払いを残すべきで、今後各医会での活発な検討が期待される。坐してジリ貧になるだけは避けるべきである。Y) 審査上の問題
院外処方箋の問題も含め包括化は画期的なことで審査員の手をはぶくことに大きな効果をもたらした。
ただし、この問題は実際に行われている検査や院外処方箋の内容は審査員は知るすべもなく、時によっては大きな矛盾を含んでいる。薬剤だけは、審査委員の審議をへずに、支払いを行ってよいとは現行の定めにはどこにも書いていない。A4判にレセプトを変更し、更に薬剤の一部患者外来負担をするとなると、診療日毎のレセプト作成が必要となり医療機関にとって大きな負担を強いるものであり、許されるものではない。こうしたソフト面での締め付けは日本医師会として、何としても排除しなければならない。
さらに、整形外科領域における人工関節手術につき毎月150万から200万円にものぼる請求書を多数審査が行われている、最高20万円余の手術料、100万円を超す材料費、その他わずかなホスピタルフィーと薬剤費、審査しようにもその余地がない現実を目の前にするとなんとも空しさを感じざるを得ない。普通の流通経済においては、買い手即ち需要者の選択が厳しいのでよりよい品をより安く供給する力が働く。
医療においてこの力を働かすには、需要者たる患者に選択させる(自己負担分を多くして)か、定額性にしてコストダウンの力が働くようにするしか方法はない。
Z) 医学研究と出来高払い


小委員会レポ−ト

      

            平成9年9月3日    委員  岡澤  寛
T支払い制度について
−主に出来高払い制の立場から− 
 現行の診療報酬体系は出来高払い制を主流とし、老人医療及び一部の小児の医療においては出来高払い制と包括払い制の2本建てとして編成されている。
 現行の診療報酬点数表における出来高払い制も原価計算から算出されたものではなく、同種の医療行為を数百種に分類して点数表化されている。
 例えば外科手術料の点数も、その手術に要した時間、手術に直接協力した人数、手術の難易度を示す技術度区分、さらに材料費、薬剤費、ホスピタルフィー(キャピタルゲイン)すべてを原価計算から算出されてはいない。内科系の目に見えない技術料についても同様である。
 しかし、今回は点数の評価が目的ではないので、一応現行点数表の出来高払い制の部分をもって出来高払い制と解釈する。
 今後の診療報酬における支払制度(方式)について考えると、種々の医療行為の評価である点数を積み重ねて、必要とした「物」すなわち、薬剤費、材料費等をすべて加えて算出された、完全な出来高払い制がよいのが当然であるが、限られた医療財源の有効利用、さらに今後、医学の進歩に伴いより高度な医療が行われることに鑑み、医療費の高騰は避けられないことから、包括払い制と出来高払い制をうまく組み合わせ、国民への良質な医療の確保と保険財政の安定をはかる必要がある。
 もちろん包括払い制とした場合のデスメリットの大きい医療については出来高払い制とすべきであることはいうまでもないことであり、薬価差益は求めないことも当然の条件とすべきである。
以下に支払い制度(方式)を整理検討した。
1. 出来高払い制であるべきもの
(1) 重傷でマニュアル通りの治療が困難な場合.
(2)多疾患の有病者で治療が複雑な場合.
(3) 急性疾患(急性感染症等)あるいは、急性期の病状にあるもの.
(4)慢性疾患でも病状が不安定である場合
(5) 診断が確定し、治療方針が決まるまでの医療.
(6)合併症併発の危険性の高い疾患の治療.
(7) 外科手術の点数、特に偶発事故の起きる可能性の高い場合
(8)難治性の疾患(難病等).
(9) その他、包括払い制になじまない疾患の治療(治療費の平均が求めがたい場合、最高と最低に大きな差がある場合等).
2.出来高払い制でもかまわないもの
 軽微な疾患でたいした医療費を必要としない場合。例えばかぜ症候群等、小児、老人では重症感染症に移行する危険性が大きく、むしろ、過少診療(過剰診療の反対)の弊害の方が大きい場合など。
3. 出来高払い制と包括払い制を組み合わせたもの(基本的には技術料は出来高払いとする)。
(1)技術料は出来高払いとして、薬剤料、検査料、特定治療材料等を全部   又は一部包括払い制とする。
 高価な薬剤の使用が過剰になり易い場合。繰り返し行われる検査が過剰になり易い場合。特定治療材料の価格等についても対策が必要である。
(2)出来高払い制であるが上限を定める(一定の金額までを支払う)。
 一か月1千万円以上のレセプトが少なからず存在している現在、この方法も考慮しなくてはならないかもしれない。さらに今後、臓器移植等が数多く行われるようになり、また、高度な医療技術が開発された場合、全額医療保険でまかなうことが難しくなるだろう。
4. 包括払い制 DRG−PPS方式、人頭割制、etc.

U支払い制度と医療機関の機能について
−主に出来高払い制を基本とする立場から−
1.診療所(有床・無床)
(1) 入院外(外来)
 医療診療所は入院外医療(外来)機能を主軸とし、プライマリ・ケア機能、かかりつけ医機能を重視。フリーアクセスの確保を基本とした出来高払いとする。
 急性疾患の医療はもとより、慢性疾患も初診時より一定期間は診断、治療方針決定までは出来高払い制とする。
 慢性疾患の安定期においても、病状、病態の変化に迅速に対応する必要があり、基本的には出来高払い制を原則とすることが望ましい。
 さらに慢性疾患も単一ではなく、複数の疾病の有病者が多く、特に老人においてその傾向が強いので、一律な包括払い制は非常に不合理がある。また、疾病によって医療費に相当差があるので、むしろ出来高払い制であることが望ましい。
 診療所は経営基盤が弱いので、包括払い制による過少診療(過剰診療の反対)を生じる危険も大きい。
@一般医療(若年者医療)
 原則として出来高払い制とする。
A 老人医療  
 基本的には出来高払い制とする。
 患者さんは、単一な疾病の持ち主ではなく、複数の疾病を有している。 さらに疾病によって医療費に相当差がある。
 DRG−PPS方式も考えられるが、現在の外総診の包括払い制には問題があり、疾病によっては高価な検査も行わなくてはならないし、高価な薬剤も使用しなくてはならない場合もある。一定点数以上の血液検査、内視鏡検査、 超音波検査等は包括からはずす等の考慮が必要である。在総診についても同様で薬剤料についても疾病によって差もあり完全医薬分業は現時点では無理であり、院外処方、院内処方での点数設定にも問題を生じる。
B救急医療
 出来高払い制で対応すべきである。
C 専門医療
 基本的には出来高払い制で行うべきであるが、繰り返し行われる検査には規制を加えてもよい。医療費の上限を定める等の方策も考慮。
(2)入院医療
@ 救急医療・急性期医療
 出来高払い制で対応を。
A 慢性期医療
 病状の変化に十分配慮した包括払い制を。
Bリハビリを中心とした医療あるいは介護を伴う医療
 介護保険と歩調を合わせた対応。
2. 病院
 一般病院 
病院は入院医療を主たる医療機能とする。
(1) 中小病院 
 入院医療と入院外医療(外来)双方の機能を有し、入院は基本的には包括払い制とすることは可能であるが、急性期医療及び治療方針の決定が行われるまでの慢性疾患については出来高払い制とする。外来診療については、基本的には診療所と同様に出来高払い制とする。
 ただし、無制限の出来高払い制ではなく、入院医療も含め、上限を定めた出来高払い制を検討する。
(2)大規模病院 
 入院医療をその機能とし、紹介外来制とする。
 急性期医療、集中治療は出来高払い制とするが上限を定める。あるいは「物」については包括払い制とする。 
 DRG−PPS方式の導入も検討を要す。
(3) 単科専門病院 
 入院・入院外医療費に包括払い制を基本とする。ただし、急性期医療、救急医療については出来高払い制とし、上限を定める。あるいは、「物」の部分については包括払い制とする。
(4) 地域支援病院、地域中核病院、特殊専門病院(特に難病等を特定した病院・病床)
 専ら入院医療をその機能とし、紹介外来制とする。 
 基本的には包括払い制とする。
 DRG−PPS方式導入可能な部分には導入する。
出来高払い制を急性期、集中治療を要する場合は適用し、上限を定める。あるいは「物」については包括払い制とする。
(5) 特定機能病院(教育・研究を目的とした医療機関)
 教育・研究部分を考慮した按分による診療報酬の点数化を考えるべきである。包括払い制の方法がよいだろう。
(6) 長期療養型病床群(老人病院等)
 包括払い制を基本とする。ただし、急性期医療は出来高払いで。
(7) 手術については出来高払い制を基本とする。ただし、材料等「物」については包括制とすることも検討の余地あり。
(8)その他
 公的医療機関か私的医療機関か。
 キャピタルゲインは広義に解釈し、公的医療機関と私的医療機関には最初から違いがある。また、税制においても然りである。私的医療機関はこの点を考慮した出払い制を基本的考え方とし、
 一方公的医療機関は、この部分を除いた包括払い制を基本姿勢としてよいと考える。
 特殊病院(精神、痴呆、結核、伝染、エイズ拠点病院・病床)については別途検討。   

 まとめ
1  診療所は出来高払い制で。
2  一般医療(若年者医療)は出来高払い制で
3 老人医療も急性期医療、診断確定までの一定期間、重複した疾病を有する患者(主に入院外医療において)は出来高払いで、その他の慢性期医療は包括払い制で。
4 病院の入院医療は原則的には包括払い制を活用し、病状、病態の変化により出来高払い制を柔軟に活用できるものとする。ただし上限を定めること。「物」については包括払い制とする等の制限は検討の余地あり。
5 重症患者の治療は原則的には出来高払い制で。ただし、上限を定める。「物」に対する包括払い制等の制限は考慮の余地あり。
6 大規模病院、地域支援病院は紹介外来制とし、原則的には包括払い制で。
7 特定機能病院については、別の診療報酬体系の検討を。
8  公的医療機関と私的医療機関についても、別体系の点数表を検討する。
9 長期療養型病床群、リハビリテーション機能を有す病床では、介護保険との整合性をはかり、基本的には包括払い制とする。
10 手術については、出来高払い制を基本とする。       


 

 出来高払い方式について  
                
                                    委員 難波 俊司
定義

○ 一技術一価、一物一価
○ 物と技術の分離
○ 積み上げ方式
問題点
○ 物の価格決定方式
○技術料の評価−原価算定方式(技術の原価)
○ 比較評価

長所
○ 医師の裁量権の保障
○目に見える技術の評価
○ 診療所の機能・特性に相応
○ 新技術・高度技術の取り入れに適す
○病態に応じた医療提供
○ 医療提供側・受給側の理解

短所
○ 目に見えない技術の評価
○キャピタルコストが含まれない
○ 無駄な医療の発生源


包括制
「包括医療制度について」
                      牛山 允 

 現在の出来高払いといわれる制度も、よくみると包括制度と言えなくもない。慢性疾患であれば「再診料」+「指導料」+「処方せん料」であるからで、1日あるいは1ヶ月の包括として採用するにあたって、出来高払いの収益を越える診療報酬を要求すべきである。その際、診療報酬は医師の技量に則したものであることが望ましい。
 外来治療できる疾病で、収入を上げるために入院をさせている現状も直視する必要があるが、病院経営にあたって、地域における必要ベッド数の確保も合せて考える必要がある。 
 老齢化社会となり、老化と疾病の違いを区別して診療にあたらなければあらない。また、高度医療の保険適応についても十分検討すべきであり、臓器移植が保険適応となれば、大部分の保険点数がそれらに支払われる結果となろう。
 特別措置法(所謂医師優遇税制)についても、健康保険法改正にあたり、日本医師会は、国民に医療費負担増を要求している今こそ、過去の経緯は別とし、これを廃止して、社会への貢献として行われている成人健診、がん健診、予防接種、校医や園医等に対しての措置、適用に切り換えるべき時期である。
 全ての疾患に対しての包括医療が実施された時は、医師の診療報酬が妥当である金額を要求すべきであり、医師定年制が導入されれば、日本医師会が開業権を与える、あるいは、統括すべきであり、それにより医師の老後を保障することができると考える。
1. 包括制度導入にあたっては疾患別による方法  
 a.急性疾患   
 b.慢性疾患(成人病、老化による症状の取り扱い)
2. 1日での包括と1月の包括医療 
  1日は「小児科外来診療料」がモデル 
 定収入が確保、物価指数に見合うアップ率の確保が必要である。
  時に診療料異常の検査費がかかる。(RAST、IgE等) 
  1月の包括は老人の「外総診」がモデル  
  定収入が確保、物価指数に見合うアップ率の確保が必要である。
  検査・投薬等の減少で疾病の見逃しをいかに無くすか。
3. 疾患による薬剤の包括〔新設〕
 薬価差なしとする方向で、疾患別による薬剤費が設定される可能性はある。その上限が設定され、それ以上になると自己負担となろう。これが実施されれば、医師の裁量権の侵害となるので、絶対に認めるわけにはいかない。
4. 包括医療のメリット
1) 検査漬け、薬漬けと言われている現在の医療について、医療機関は再評価せざるを得ない。
2) 医師の技量の差で収益率が変わる。
  最小限の検査で診断し治療ができる。不要な検査をしなくなる。
不必要な投薬がなくなる。
5. 包括医療のデメリット
1) 医学の進歩が遅れる。
2) 高度医療の後退が起こる。
3) 最小限の検査となり、疾病の見逃し、誤診率が増える可能性がある。
4) 検査料が診療料を越え、診療する意欲の減退や慢性疾患診療拒否に繋がる可能性がある。


支払い方式としての定額制   
                     京都府医師会  田村 元
「定額制に包括度の概念導入」  未完

(1)諮問「医療機関機能に応じた診療報酬のあり方」の医療保険制度改革に置ける位置づけ
 医療保険改革の目的は、現行の社会保険方式による医療の提供の仕組みを守った上で国民皆保険維持、この中での諮問事項の位置づけは
@ 定額制の拡大による医療費の抑制(経営効率化による収益率向上と表裏一 体) 
A 診療報酬上医療機関の役割を明確化、無駄排除を経済的動機で誘導
(2) 評価方式とその対象医療サービス
 出来高制: 診療的サービス(診察料、処置料、入院中のケア料、読影        料、検査判断料、手術料)
定額制: 経営的サービス(入院料(食事、寝具、看護)、検査料、薬剤材料、手術室使用料、ICU使用料)  
  定額制は細分化により出来高へ移行する点で、定額、出来高は連続的
(3) 定額制の包括度
 ・ 包括度0%から100%、0%=出来高制 100%=DRG/PPS包括度の要因  は(4)
 ・ 収益率は包括度に比例
 ・ 望ましくないインセンティブも包括度に比例
(4)定額制の単価決定要因
 基本要因:重症度(傷病名)、対象サービス、設定期間   
  例 疾病ごとに(重症度)注射と内服(サービス)を一日単位で(期間)
 加算要因:看護基準、施設基準、手術の有無
(5) 定額制の望ましくないインセンティブへの対策
 出来高制が完全な原価主義に基づき、経済的動機が発生しないことが前提
@ 医療の質の確保   
A 重症度の高い患者に対しては単位期間を短く設定
B 混合診療の禁止
(6) 医療機関の機能分担との関連
  慢性疾患は包括度を高く急性になるほど包括度を低く設定
入院の定額は必然的に外来よりも包括度は高くなる
包括度の上下限の設定は可能か
診療報酬への導入は包括度を段階的に上げていく


1997.10.19掲載


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