九州ブロック日医代議員(含・次期)連絡会議

日本医師会

有床診療所に関する検討委員会

報告

日時:平成20年3月8日(土) 17:40〜18:40
場所:ホテルニュー長崎

日本医師会有床診療所に関する検討委員会

委 員  美 川 隆 造  (佐賀県)

「有床診療所に関する検討委鼻会報告」
           平成20年3月8日

 
佐賀県の美川でございます。
 「有床診療所に関する検討委貞会」には、九州
ブロックから長崎の賓藤政理先生、福岡の鹿子生
健一先生と私の3人が委員として出ていますが、
本日は私から報告をさせていただきます。
 報告の全文をお手元に差し上げております。
 時間の関係で"早口''に読み上げますので、ご
覧になりながらお聞き下されば有り難く存じます。

◆有床診療所(有床診)の特性
 ご承知の通り、有床診療所とは19床以内の
病床を持つ小規模医療施設で、高齢者の療養
や介護の受け入れ、正常・異常分娩、あるい
は小手術から比較的高度な手術の実施まで、
地域に密着し住民のニーズに応じた適正な医
療を柔軟に提供することで、長い間わが国の
中核的医療単位として機能してきた。現在、
わが国の層分娩数の47%を有床診が担って
いる。
 有床診がこうした役割を担ってこられた理
由は、基本的に、専門医や家庭医機能を持っ
た意欲ある一人の医師が、地域の需要に応じ
て分布開設し、外来診療に引き続き、主治医
として入院診療に当たることができるという
特性があったからである。
 有床診は大病院と異なり、病者・家族にと
つて、距離的・心理的アクセスの良さは何物
にも代え難いものがある。有床診は病者がそ
の生活の中で医療を受けられる場であり、ま
た通常は患者と同じ地域に生活する一人の開
業医が、患者の身体的既往にとどまらず、社
会的、家族的、個人的背景をも知った上で包
括的医療を実践していく。したがって、多様
化する患者のニーズに対応していくには、大
病院の組織医療より、有床診の立場のほうが
より適切な全人的医療の提供が可能である。

◆有床診のこれまで
 有床診の管理者は、入院患者を医師自らの
責任で管理し、法的な要求がなくても必要な
看護職を配置してきた。
(※現在、人員配置については看護師等の多寡に
より診療報酬に差をつけて、間接的に管理評定さ
れている。)
 また、安全基準等の規制にも、多くの有床
診は対応してきた。特に高度専門医療を提供
する場合や複数の医師を要する手術など、さ
らにやむを得ない医師不在時の対応について
も、病診・診診連携、あるいは地域医師会内
での連絡を密にして、責任ある対応に努めて
いる。
 それゆえ、医療法制定以来過去60年にわた
り、有床診に対して社会的なクレームはついて
おらず、「ゆうしょうしんりょうしょ」の概念
は国民に定着しないまま、患者側からは「びょ
ういん」と呼ばれて、それなりに社会に受け入
れられてきた実績を持っている。
(※先般、佐賀県内の有床診に入院中の患者が暴
力団関係者と間違えられて射殺されるという痛
ましい事件があったが、メディアは「びょういん」
」と報道した。かように「ゆうしょうしんりょうしょ」
いう概念は一般には定着していない。)

◆有床診の現状
 国は、昭和60年の第一次医療法改正で「地
域医療計画」を策定したが、その際に、突然、
それまで全く死文化していた「診療所は、48
時間を超えて患者を収容しないよう努めなけ
ればならない」という同法13条の患者収容期
間制限条項を盾に、有床診の満床を"緊急避
難的な病床''と位置づけ、"正式な病床ではな
い''として、地域医療計画の必要病床数の算
定から除外した。
(※この時、竹中健政局長(当時)が、''有床診
療所の使命は終わっだ,と公言した。)
 そして各医療圏の病院病床の必要病床数を
設定し、過剰医療圏では、期限を切ってその
後の新規の病院開設や増床を禁じたことから、
現実には既存の病院と有床診の病床数を合計
すれば過剰であるのに"見かけ上の病床不足,,
という事態が出現し、一年間に一挙に6万床
という未曾有の病院の"駆け込み増床"を引
き起こし、必然的に看護職の不足を招いた。
 この医療計画で、国が"有床診無用論,,を
明確に打ち出しているにもかかわらず、当時
の日医の対応は極めて曖昧で、これをそのま
ま受け入れたために、後に大きな問題を残す
ことになった。
 有床診の今後の存続に危機感を持った有床
診開設者は、63年2月に立ち上げた全国有床
診療所連絡協議会を通じて、日医にその存在
意義を強く訴えてきたが、その後、有床診問
題は何の進展もないまま経過した。
 平成14年3月未の日医定例代議員会で、有
床診に対する日医の姿勢が厳しく追求された
結果、14年9月からプロジェクト委員会とし
て「有床診療所に関する検討委貞会」が設置
され、18年度から他の委員会と同様、常設委
員会となった。
 同委員会の開催は、別添資料の通りである
が、委貞会の基本的論点は、@「患者の入院
期間に関する48時間規制の扱い」A「診療報
酬における評価」及びB「法制上の枠組みの
あり方」の3点に絞られ、とりわけ、運用の
実態が形骸化しているにもかかわらず旧態依
然とした48時間規制の撤廃に向けた議論が
中心的論点となり白熱した議論が展開された
が、16年3月末の答申に"この問題が長期に
わたって解決されないのは、有床診の役割と
その実情を理解しようとしない国と、医療関
係者にも責任があると言わざるをえない,,と
書き込まれた。(註ここでいう「医療関係者」とは「日
医」を指したものであります。委員長が執行部に気遣いをな
さってこういう表現としたものです。)
16年度・17年度も同様の議論が続き、有床
診の機能を類型化して法制化することについ
ても検討されたが、すでに有床診の療養病床
が機能していることから、これ以上の制度的
区分は適当ではないとした。
 一方、厚労省は17年4月から初めて有床
診の問題を社会保障審議会医療部会に諮問し
た。"13条の無条件撤廃''を求める有床診当
事者の基本的な主張がどこ迄反映されるか、
また、医療部会の委員はすべてが医療関係者
でないことから、厚労省の不十分な説明では
有床診の扱いがどのようになるのか注目され
たが、同部会では、医師ではない委員である
全国町村会会長の山本文男氏(福岡県添田町
町長)や、当時、全国市長会会長であった大
橋俊二氏(静岡県据野市市長・小児科医師)
等の「48時間規制はナンセンスだ。有床診は
地域医療に絶対必要だ」という強力な発言が
あったと問いた。
 医師ではない委員から見ても、"48時間,,
という超非現実的・不可解な患者収容期間制
限条項が、医療法施行以来、実に60年も続い
てきた。
 こうして18年6月の第5次医療法改正で、
実態からかけ離れた"48時間,,という収容期
間制限がようやく撤廃された。
 しかしながら、一方では有床診の無床化が
年ごとに著しくなっている。
 診療所の入院医療費は、昭和55年に国民稔
医療費の4,2%を占めていたが、平成2年に
は2,5%、12年には1,4%と大幅に減少し、
毎年約1,000の診療所が病床を閉鎖している
状況である。13年6月には17,460施設あっ
た有床診が、19年10月には12,348施設にま
で減少している。
 その原因として、患者の大病院志向や、病
院と診療所との医療機能の格差等があるが、
中でも、病院と有床診との入院基本料の格差
の拡大、介護施設をはるかに下まわる低い入
院料が、病床の運営を急速に困難にしている。
(※病院と有床診の入院費は、昭和56年までは
同額の3,480円であった。最初に差が生じたのは、
病院の看護師配置に対して1日22円がつけられ
た時である。その後、何の根拠も示さないまま格
差が広がり今日に至っている。現在、病院の最も
低い入院基本料と有床診の最も高い入院基本料
には一日6,000円もの格差がある。因みに、有床
診の最低の入院基本料は一日2,800円に設定され
ている。)
 このまま今まで通り年1,000施設の病床開
銀が続けば、12年後には有床診は消滅するこ
とも予想される。
 これでは、"かかりつけ医''として患者の近
くに存在し、かつ、比較的低額な負担で入院
できた有床診の利便性が失われ、地域住民に
とって大きな不便と不利益をもたらすことに
なるであろう。
 本委員会は、18年度後半から19年度にか
けて、「20年度医療費改定に向けての有床診
の診療報酬における評価」について議論を行
い、@改正医療法と診療報酬との整合性の観
点から、入院基本料が適正に評価されること、
A後期高齢者医療制度に係る診療報酬改定に
おいても、有床診の入院医療が適正に評価さ
れること、B地域における有床診の今後の役
割・機能がこれまで以上に重要となることの
3点を盛り込んだ緊急提言(19.3.16)・緊急
要望(19.10.22)を唐澤会長宛に提出した。

◆今後の有床診のあり方

 急性期、慢性期を問わず、診療所の外来と
大病院の入院機能との間には、病院に行くほ
ど重症ではないケースや病院への入院待機、
在院日数短縮化が進められる中にあって、病
院退院後の後療法も含め、有床診で対応でき
る幅広い患者層が現実に存在する。
 療養病床削減・再編成、介護病床廃止など、
国は、その受け皿となる施設が未整備のまま、
入院から在宅へと誘導政策を進めているが、
介護者不在、あるいは老老介護で自宅での生
活が不可能な人たちが現実に多数いる。この
ようないわゆる医療・介護難民はどこに行け
ばよいか。地域住民にとっての利便性は、当
局のいう「良質な医療」の要件に先立つ大前
提である。
 今後なお、"近くで、知っている''有床診の
存在とその活用が必要であると考える。ただ、
前述の通り、入院料があまりにも極端に抑制
されているため、患者にとって便利で低負担
の病床が支えられず、閉鎖・崩壊に瀕してい
るのが現状である。
 この際、これら既存の病床・施設に存続可
能な対応措置がとられ利用されるなら、むし
ろ医療・介護費の節約につながるであろう。
有床診に期待される役割はますます大きいも
のがあると思う。
 患者の生活圏の中で身近にあって、かねて
から知っている一人の医師が、地域に密着し
てプライマリケア機能を果たしている有床診
は、高度で専門的かつ多様な組織医療を行っ
ている病院と、その規模や患者に対する機能
が大きく異なる。
 したがって、今回の医療法改正を機に、「病
院病床」と「診療所病床」は別の概念で捉え、
最大でも19床という経営効率の悪い有床診
を患者の利便のために存続させるため、複雑
な病床区分や制約を設けず、実態に即したも
のにし、急性期から慢性期、終末期に至る医
療・介護が行える自由な病床として、その柔
軟な特性を維持させるべきである。有床診の
入院に係る診療報酬については、「病院」と「介
護施設」の中間程度の評価がなされて当然で
あろう。(これは、委員全員が合意したもので
ある。)
 なお、18年10月には、有床診の役割や重
要性、現状等に理解を示した自民党衆・参議
員の有志60人が「有床診の、活性化を目指す議
員連盟」(会長山崎拓氏、会長代理木村義雄氏、
幹事長原田義昭氏)を立ち上げていただき、
この一年間に7回もの勉強会を重ね力強い応
援をいただいている。ご当地長崎県選出の冨
岡勉代議士には、その議連の事務局長として
大変お世話になっている。
 本来は日医を通じて折衝すべきであろうが、
全国有床診療所連絡協議会としては有床診の
死活に関わることであり、議連の支援を得て
厚労省各部局の担当者とも話し合いを行って
いる。しかし、担当官によって有床診につい
ての理解度も異なり、縦割り行政の中、思う
ような成果が得られていない。
 極めて残念なことに、従来、日医は厚労省
との間で有床診問題について具体的な話し合
いの場を持ったことがないと言う。日医の委
員会では論議は尽くされた感があり、今後は
日医による当局との具体的な折衝の開始を切
に願うものである。
 報告は以上であります。
 ご出席の代議員の先生方に、有床診療所が抱え
ている問題点や現状についてご理解を深めていた
だきご支援を賜りたく、これまでの経緯も含めて
報告させていただきました。


「有床診療所に関する検討委員会」委員・開催年月日

平成14年・・・坪井執行部・・・(プロジェクト委員会)
※諮問 「有床診療所の将来構想について」
委員長:大道 久(日本大学教授) 担当:星 北斗日医常任理事
委 員:伊藤信一(青森:眼)、犬尾博治(長崎:内)、大岩俊夫(福岡■:外)、
   海江田健(鹿児島:外)、小林 高(岩手:産婦)、田那村 宏(千葉:整)、
   内藤哲夫(横浜:外)、藤野圭司(静岡:整)、長谷川友紀(東邦大学教授)
 第1回委員会(14.11. 6) 第2回委員会(14.12. 4)
 第3回委員会(15.1.22) 第4回委員会(15. 3.12)
※検討経過報告を提出(平成15年3月25日)

平成15年・・・坪井執行部・・・(プロジェクト委員会)
委員長:大道 久(日本大学教授) 担当:星 北斗日医常任理事
委 員:伊藤信一(青森:眼)、大岩俊夫(福岡:外)、海江田健(鹿児島:外)、
   小林 高(岩手:産婦)、田那村 宏(千葉:整)、徳永昭夫(愛媛:外)、
   内藤哲夫(横浜:外)、藤野圭司(静岡:整)、柵木充明(名古屋:産婦)、
   美川隆造(佐賀:内)、夫崎敏夫(石川:外)
 第1回委員会(15. 5.1) 第2回委員会(15. 6.22)
 第3回委員会(15. 7.21) 第4回委員会(15.10. 2)
 第5回委員会(16. 2.26)
※検討経過報告を提出(平成16年3月26日)

平成16年・・・植松執行部・・・(プロジェクト委員会)
※諮問 「有床診療所の今後のあり方について」
委員長:大道 久(日本大学教授) 担当:三上裕司日医常任理事
委 員:伊藤信一(青森:眼)、大岩俊夫(福岡:外)、海江田健(鹿児島:外)、
   小林 高(岩手:産婦)、徳永昭夫(愛媛:外)、内藤哲夫(横浜:外)、
   美川隆造(佐賀:内)、水守彰一(兵庫:外)、森 康(広島:整)
   大崎敏夫(石川:外)
 第1回委員会(16. 9.1) 第2回委員会(16.11.17)
 第3回委員会(16.12.24) 第4回委員会(17.1.19)
 第5回委員会(17. 2.22)

平成17年・・・植松執行部・・・(プロジェクト委員会)
委員長:大道 久(日本大学教授) 担当:三上裕司日医常任理事
委 員:伊藤信一(青森:眼)、大岩俊夫(福岡:外)、海江田健(鹿児島:外)、
   小林 高(岩手:産婦)、徳永昭夫(愛媛:外)、内藤哲夫(横浜:外)、
   美川隆造(佐賀:内)、水守彰一(兵庫:外)、森 康(広島:整)、
   大崎敏夫(石川:外)
協力者:江口成美(日医総研主任研究員)
第1回委員会(17. 4.20)  第2回(17.6.1.)
第3回委員会(17. 7. 6)  第4回(17.8.24)
第5回委員会(17. 9.21)
米有床診療所実態調査を付して答申(平成17年11月3日)

平成18年度・・・唐澤執行部・・・(常設委員会)
委員長:大道 久(日本大学教授) 担当:鈴木 満日医常任理事
委 員:青木 敏(和歌山:整)、石島弘之(茨城:整)伊藤信一(青森:眼)、
   大橋克洋(東京:産婦)、鹿子生健一(福岡:整)、小林 高(岩手:産婦)、
   西城英郎(三重:外・内)、斉藤政理(長崎:外)、内藤哲夫(横浜:外)、
   西池 彰(北海道:整)、松村 誠(広島:循・外)、美川隆造(佐賀:内)
協力者:江口成美(日医総研主任研究員)
  第1回委員会(18. 8. 3) 第2回委員会(18. 9.15)
  第3回委員会(18.11.10) 第4回委員会(18.12.20)
  第5回委員会(19.1.24) 第6回委員会(19. 3.1)
※「平成20年医療費改定へ向けての緊急提言」を提出(平成19年3月16日)

平成19年・・・唐澤執行部・・・(常設委員会)
委員長:大道 久(日本大学教授) 担当:鈴木 満日医常任理事
委 員:青木 敏(和歌山:整)、石島弘之(茨城:整)伊藤信一(青森:眼)、
    大橋克洋(東京:産婦)、鹿子生健一(福岡:整)、小林 高(岩手:産婦)、
   西城英郎(三重:外・内)、斉藤政理(長崎:外)、内藤哲夫(横浜:外)、
   西池 彰(北海道:整)、松村 誠(広島:循・外)、美川隆造(佐賀:内)
協力者:江口成美(日医総研主任研究員)
第1回委員会(19. 5.10)第2回委員会(19・7.4)
第3回委員会(19. 9.19)第4回委員会(19.11.9)
  第5回委員会(20.1.16)
※「平成20年医療費改定へ向けての緊急要望」を提出(平成19年10月22日)


2008.4.24