加瀬達夫神奈川県有床診療所協議会副会長の投稿
小笹先生「ゆうしん」発行ありがとうございます。
会員の間にこのようなメディアがあると大変便利ですし、何でもいいたいことや、
いろいろなアイデアなどを交換するのにちょうどいいと思います。出来ればメール
でやり取りするとなお便利かと思います。
即答するようにとのことでしたが、忙しさにまぎれてなかなか書けませんでした
ことをお詫びいたします。
1.専門科目:内科(循環器、消化器、呼吸器、神経内科)、皮膚科、精神科
19年前、今は横浜市医師会議長をやっておられる中野雄二先生とともに都筑区
で「つづき病院」設立に参加、そこで5年間副院長をやっていました。もともと精神
科の出身でしたがその頃から日本医大第二病院の先生方に指導していただき、
内科、特に老人医療に取り組むようになりました。私も老人病院設立をしようと
思っていろいろ計画しましたがちょうどその頃から「地域医療計画」なるものが
実施されてこの辺では病院設立が不可能になり、やむなく有床診療所でやる
ほかありませんでした。苦労の末平成2年にやっと金沢区六浦の町の中の手ごろ
な土地を見つけて19床の有床診療所「金沢中央病院」を設立しました。設立当初
は一般の内科の患者も入れていましたが、老人が増えるにつれて、若い人は入
らなくなり、脳血管障害後遺症やパーキンソン病、などの長期療養を要する患者
ばかりになりました。リハビリを積極的にやろうと思った時期もありましたが次第
に重症の方が多くなりとてもリハビリどころではなくなりました。
当初はIVHの患者も5〜6名おり、その管理で大変でした。
平成7年に医療法人化、平成11年に介護保険制度に先立ち病棟を療養型病床群
の基準にするために改築。そのため2床減らさざるを得ず17床になりました。
平成12年4月医療保険による療養型施設に変更。さらに平成14年9月より介護型
療養施設の指定を受けました。
2.一番苦労したこと
ともかくナース集めと、ナース間の仲間割れの結果一度に3名のナースがやめ
てしまったこと
3.一番うれしかったこと
看護科、事務、給食の職員がともかくトラブルなく仲良くやってくれること。また
患者さんが亡くなった後、「よくお世話してくださってありがとうございます」といわ
れたとき。
4.失敗したこと
バブルの時に大借金をして建てたので返済が大変だ〜!長生きすることと、少し
でも余裕があったら返済して早く借金を終わらせたい
5.今の考え
開業してしばらくは、老健施設や訪問看護などにも手を広げようかと思ったが
相棒の家内(事務長)が「これ以上やらないで」というんで現在の医院を手堅く守
っていくことに専念しています。また、後継者がいないので、この先私の身になに
かあったらどうしようか?あるいはどうやってこの医院をたたんだらよいのかなど
胸を去来します。
今は一人で病棟を診て、一人で外来をやり一人で在宅医療としての往診を8件
診ています。24時間拘束された生活が14年間続いています。でも風邪ひとつひか
ないでやってきました。いまや62歳ですがこの先どうなるかと心細さも感じます。
今一番頭を悩ませられているのが介護保険の適用になってから、やたらと行政
(県が主である)がうるさくなってきて、チェックリストを出せとか実地指導に行くとか、
自費分の徴収を厳しくしたり、経営状況を提出せよとかいろいろと介入してくること
です。加えて意見書をはじめさまざまな書類を提出させられることです。休日は
書類書きで終わってしまいます。
6.国の医政に対して思うこと
小泉さんも坂口さんも与党の政治家は医療費が高すぎるからこれを削るべきで
ある。そのためには聖域など無い。というけれど、医療はもともと金がかかるに決
まっているのです。医療が高度化すれがするほどかねがかかる。医療の高度化が
とまることなどありえない。無駄を省くことは大切だが、もともと低医療費政策の
日本でこれ以上節約することは不可能である。結局は政治家の逃げ道は国民に
その負担を押し付けるいつものやり方である。
新しい制度や施策をつくると国ははじめ甘いことを言って高い診療報酬を掲げて医者
達をそちらに誘導する。その制度が定着したかと思うと途端に手の平を返したように
報酬を引き下げかつ、指導だ違反だと厳しくなってくる。これを詐欺まがいの手口と
言わずしてなんというべきか?
医療保険で懲りている医者達われわれは、介護保険でもそうなるに決まっていると
思ったら、やっぱり案の定である。このところ国や県の態度は役人根性丸出しである。
私は病床転換の工事を始める前に、県に補助を出すと言うんで平成10年の12月に
県庁に赴き、補助が出るのかどうか確かめに行ったところ確かに出ますので1月10日
までに書類を出して下さいといわれたので、業者と正月もなく計画を練って1月6日に
書類を持っていくと、担当の人は代わっていて補助金がでるかでないかわからない
とのこと、わけを聴いても納得のいく答えは返ってこない。要するに県会で次年度の
予算が通らないとなんともいえないらしい。いくら待っても補助金の話は埒が明かない
ので、補助金はあきらめて自費で工事をやったのである。1400万くらいかかったかと
思う
そういういい加減な行政は一方では、われわれに厳しく迫ってくる。患者の自費分を
めぐって殆ど経営がどうなるか瀬戸際に立たされるかもしれない額に絞ってきたので
ある。こちらとしては設立時にも改築時にも一銭たりとも県や国から金などもらって
いない。にもかかわらずである。
ちなみに介護療養施設サービス費に関して病院と有床診とを比べてみよう。
病院の場合
(三)の看護職員6:1以上、介護職員6:1以上の要介護6の場合1190単位である
有床診の場合
(一) の看護職員6:1以上、介護職員6:1以上の要介護5の場合1008単位である。
しかも有床診の場合、夜間勤務体制加算がない。
単純に計算してみると、病院と診療所が同じ条件の場合
病院と診療所のひと月間の差額は5460単位である。17床であると
5460×17=92820単位
年に
82820×12=1113840単位の差になるのである。
1単位10円とすると年に
11,138、400円もの差が生じるのである。
しかも設備人員診療内容など病院と遜色ないはずである。
いや少なくとも私の医院では病院に負けないぐらいに看護内容は充実している
自負しているが....
7.日医に対して思うこと
あまり何も期待していないし、関心ないです。日医ニュースと言うのがくるがあまり
読むところがない。もっと皆の関心事を取り上げたしんぶんにしてほしいなあ!日医
の幹部の方々も医薬の傍ら医師会活動しているのでしょうからたいへんだな〜と思
います。もちろん息子に医業を任せている人もいるでしょうが、片手間に国の医政に
かかわることはこわいことですな。ともかく、日医は元気がない、もっと国に言うべき
ことをいい、強気に出ないといつも長いものに巻かれてばかりだ!
8.これからの経営に対して
今まで医療中心でかなり重症の患者ばかり入院させていたが、医療費は殆ど持ち
出しであるので、経営を圧迫しかねない。かといって軽い患者ばかりでも介護サービス
費が安すぎてだめだ。その辺の患者選択がうちでは問題になりつつあります。MRSA、
緑膿菌保持者は避けなければならない。IVH施行者もだめ。なるべく一人でご飯が
食べられて、手がかからない患者を入れることになる。外来も患者が減ってきている
ので何とかせねばならないが設備投資は避けねばならない。生活習慣病の患者さん
に対してきめ細やかな医療援助をすることだろう。また地域の機関と手を組んで介護
保険制度を逆に活用してやることだろう。
9.医療そのものに対する意見
たくさんあって何をはなせばいいかわからないほどです。そのうちまた、
頭を休めてから書いて送ります。
平成16年9月20日 加瀬達夫記
2004.10.5