全国有床診療所連絡協議会ニュース
総会特集号
有診協ニュース第48号
平成15年8月発行
第16回全国有床診療所連絡協議会総会開催さる
平成15年8月2日・3日の両日にわたり、和歌山県有床診療所協議会(青木敏会長)
の担当により、第16回全国有床診療所連絡協議会総会がホテルグランヴィア和歌山
で盛大に開催された。
昨年8月、長崎市で開催された 第15回全国有床診療所連絡協議会総会の時、
坪井日医会長より「日本医師会の中に有床診療所に関するプロジェクトチームを立ち
上げる」と発言されたのを受けて、早速、平成14年11月6日、日医内に有床診療所に
関する検討委員会(プロジェクトチーム)が発足した。以来、昨年度に4回、本年度は7月
31日までに3回の委員会が開催された。その委員会での私達有床診療所側の委員の
主たる眼目は、有床診療所の存続基盤の確立にある。そのための第1目標は、医療法
13条(48時間規制)の撤廃であり、第2目標は、有床診療所が生き残れるような入院
基本料の引き上げである。その何れも早急に解決のできるものとは思っていないが、
私達執行部の懸命の努力により、僅かづつではあるが日医側に私達の考えや実態が
わかってもらえつつあるというのが現在の実情である。なお、平成15年6月10日に
第1回の厚生労働省との打合せ会が行われたが、その設営の仕方、内容などに我々
委員側は極めて強い不満を持っものであった。このような状況の中で、今回の総会が
開催されたわけであるが、私達会員には13条解決の先が見えて来ないこと、診療報酬
改定についても明るい兆しが見えないことなどから大変苛立ちの思いが見られることと
なった。
その様なこともあり、坪井日医会長は挨拶の中で、「有床診療所の先生方が希望する、
一1一
医療法13条の48時間規制の撤廃と、入院基本料の引き上げについては、日医の中に
設けた検討委員会で最終段階まで詰める。」と明言された。そして「この機を逸しては永遠
に解決できない。」と述べ、更に「壇上でこれだけのことを言うかぎりは、相当の度胸と確信
がないと言えないことである。」と今後の推移に自信を示された。私達は、それこそ、この
問題が今後どうなって行くか固唾をのんで見守っていると言えよう。
次いで行われた厚生労働省の西山正徳医療課長の「医療制度改革の動向」、日本経済
新聞社渡辺俊介論説委員、川崎医療福祉大学川原邦彦教授の講演は、我々開業医に
とっては大変厳しい内容のものであったが、現在の厳しい社会情勢に目をそむけては私達
は決して生き残れないと思われるだけに、出席した会員は皆謙虚に受け止めたように思わ
れた。
また、2日目の最後には"有床診療所の諸問題について"と題して、医療制度改革について
糸氏英吉日医副会長が、また診療報酬改定にっいて青柳俊日医副会長が講演され、引き
続いて「社会保障は国家安全保障」と題する坪井栄孝日医会長の講演があり、期せずして
日医首脳の揃いぶみになったが、非営に真面目な取り組みの姿勢を表したもので、大変好評
であり、出席した会員は皆満足したものと思われた。
次期開催地は札幌市で、平成16年7月31日(土)・8月1日(日)が予定されており、西池彰
会長代行から力強い招待のことばが述べられた。
開会の挨拶
第16回全国有床診療所連絡協議会総会会長 青木敏
本日は、第16回全国有床診療所連絡協議会総会を『紀の国・和歌山』で開催致しま
したところ、ご来賓の方々をはじめ全国各地より多数の会員・ご家族のご参加をいただき誠に
有り難うございます。
一2一
さて、我が国医療の原点であり、医療文化でもある有床診療所が地域医療を支え、住民の
健康の維持、増進に寄与してきた実績は衆人の知るところであり、高齢社会を迎え、その役割
は重要且っ必要欠くべからずのものになってきています。
有床診療所連絡協議会が発足して今回で16回目の総会になりますが、この間、われわれ
有診連協は、日本医師会・厚労省に有床診療所の重要性、診療報酬改善を訴え続けてまいり
ました。そして日本医師会の協力を得て、平成4年には「小規模入院施設検討委員会」が設立
され、その報告書も出来上がっています。平成7年には、この施設に関するシンポジウムが
医学会総会で開催されましれ昨年からは、日本医師会の中に「有床診療所に関する検討委員
会(プロジェクトチーム)」も設立され、私たちの第一希望である医療法13条(いわゆる48時間
問題)撤廃を中心に検討していただいています。非常に有り難いことと感謝していますが、
末だ、13条は撤廃されていません。早期撤廃にむけて日本医師会には、尚一層のご助力を
お願いするとともに、会員一同の団結と努力が必要と思っています。現実として医療法上の
入院施設としての位置づけの問題、診療報酬上での病院との格差、すなわち一般病床で病院の
最低入院基本料と、有床診療所の最高のものとを比べると1日5,000円以上の差があり、
療養病床では施設基準が全く同じでありながら1日3,000円以上の格差がある等の問題で、
医療経営が成り立たず無床化に転じていく診療所が増加してきています。これは日本の医療
資源の損失であり、地域医療の危機でもあると思っています。
そこで今回の総会では、現在有床診療所が抱えている問題を分析し、今後の医療制度改革・
診療報酬改定とこれに対する有床診療所の対応・将来についてそれぞれの専門分野の立場
からご講演いただき、会員の皆様方に有床診療所が地域医療を支えながら、生き残れる道を
探る道標にしていただくよう企画いたしましした。
坪井会長には「社会保障は国家安全保障」というテーマで、格調高いご講演をしていただける
ことになっています。最後までご参加いただき、実り多い総会になることを祈念し、挨拶とさせて
いただきます。
一3一
会長挨拶
全国有床診療所連絡協議会会長 内藤哲夫
本日、第16回全国有床診療所連絡協議会総会がこの和歌山県で行われるに当たりまして
、全国各地より多くの会員の方々、また来賓として日本医師会から坪井会長、糸氏副会長、
青柳副会長、星常任理事、青井常任理事、県からは和歌山県医師会長の岡先生、厚労省から
は保険局医療課より西山課長、その他沢山の方々のご出席を頂き、本総会が盛大に挙行され
ますことをこの上ない慶びと思っております。又、この総会を開催するに当たり、細かい準傭と
ご配慮を頂いた青木総会会長をはじめ、関係各位に心から感謝の意を表したいと思います。
さて、全国有床診療所連絡協議会が発足して、既に16年目を迎える事が出来ました。
その間、あらゆる決議文、要望書を日医を通して厚労省に提出して参りましたが、殆どそれは
空振りに終わったと言っても過言ではないと思います。
昭和23年、今から55年前にG・H・Q(当時の占領軍)によって作られた医療法13条の中
に48時間規制の努力目標が定められました。当時は戦渦の後で、病院も少なく病床も少なく
入院設備も十分に整っていない時代で、診療所でも入院させていいですよ、ベッドの規制も
何もありませんので応接間でも何処でもよいから急病人は入院させて下さい。
ただしお困りの医療機関もあるでしょうから、その時は48時間位にして下さい。しかし、主冶医
が病状を見て、もっと必要だという時にはその限りではないという、そんな時代の13条であります。
それから55年が経過しているのです。その過程に於いて、診療所の中でベッドを持っ医療機関
を有床診療所として、色々な規制をかけてきたのであります。廊下の幅、ベッドの容積・指導監査
・感染対策・安全対策・褥瘡対策の問題等が、最近はかなり厳しくなってきております。
しかし、55年前の医療法13条だけはそのまま残っているのです。半世紀前(終戦後)のこの
13条そのものは、今は全く死文化している現状であります。我々は基本的に、この13条の
無条件撤廃を求めるものであります。看護師の静脈注射の問題も数十年の慣習となって世間
に密着しているとして、その規制も撤
一4一
廃されたばかりです。有床診療所も全く同じであります。55年も地域に密着しており、48時間
で退院させなくてはいけないと言う事は今迄ないわけでありまして、小回りのきく医療機関として
国民の健康を守り、そして、今まで何の問題もなく半世紀以上過ごしてきたわけであります。
また、診療報酬の入院基本料に於いても、病院の入院基本料V(最低)と有床診の入院基本料
I(最高)とを比べてみましても、格差が1床当たり1日に約5,000円以上もあり、年間で3,000万
以上の差が出てきます。このような不条理なことに対しても、われわれはその是正を13条とともに
強く要望しており、少なくとも現状より1日1ベッド2,000円以上のアップを求めている処であります。
この様な状況の中での有床診の活性化を進めるために、昨年の長崎の総会の折、坪井会長に
直接要望して提案しましたところ、日医内に有床診に関する検討(プロジェクト)委員会を立ち上げて
いただきました。心からお礼申し上げたいと思います。昨年11月6日、第1回目の委員会が開かれ、
委員長に大道先生が、日医担当理事として星常任理事が当たることになりました。この委員会は昨年
度4回、今年度も引き続き5回開催される予定で、主に医療法13条の完全撤廃の要望と、診療報酬
(特に入院基本料)のアップ改正を検討しているところです。その中で厚労省医政局の榮畑潤課長に
同席していただいた折、医療法13条の成立の過程にっいて話をして頂きましたが、結論は先送りに
なっています。
昨年からの医療制度改革と診療報酬減額改定は、小泉内閣に於ける社会保障の問題の中で最も
大きな過ちであったと思います。それは国民皆保険制度の崩壊にっながりかねないからです。
経済財政諮問会議、総合規制改革会議の議論は財政主導型の改革であり、官邸からトップダウンで
丸投げ的な改革をしようとしたのではないかと思われるのであります。昨年4月の再診料の逓減制
(今年6月から廃止)の導入、10月からの外総診の廃止、老人医療費の改定、今年の4月から被用者
保健3割負担改訂等々、国民医療費を医療機関・患者に負担させて減らす手法は、社会保障制度として
の逆行であり、世界に冠たる国民皆保険の存続をも危うくするものであります。特に株式会社導入、
混合診療受け入れは、まさにその危機感を持つものであります。
一5一
また一方・中医協に於いては、日医の完全なる理論武装をお願いしたいと思います。各診療科は
それぞれ特性があり、全く同一に考える事はできないかもしれませんが、委員としてのそれぞれの
専門分野の人を代理で出すことも必要ではないでしょうか。委員の代理出席も認められていると
聞いています。支払側(一号側)も、時には代理の委員を出していると聞いています。その中で、
しっかりとした、相手が納得出来る理論を構築する必要があると考えます。
日医のアンケートの結果を見ても、病院と一般診療所では減額率に大きな違いがあります。
大病院の方は小さく、診療所の外来は大きな減額になっているのも事実であります。両方を加算
して平均を出すのでは、診療所が大きな減額になっているのが見えません。国民医療費がこれほど
減少したということのみを知らせるに過ぎません。従って、診療所の減額率が余り低くなっていない
という錯覚を相手に与えかねません。病院の減額と診療所の減額とを別枠に考えて、その問題点
にっいて別々に対応して頂きたいと思っています。
この様な時期であればこそ、全国有床診療所連絡協議会は一致団結して、各科に亘って、専門的
視野から地域に密着した、小回りのきく、地域医療が十分に果せる医療機関の経営安定のために、
大同団結して全国的拡大を期待するものであります。いっも申し上げるように数は力であります。
今回は新たに長野県・千葉県医師会に協議会・部会が設立されました。会員総数5,OOO名になろう
としています。来年の17回総会は、札幌市で開催される予定になっております。再来年は広島市で
開催される予定になっております。益々この会が回を重ねるごとに会員増強にっながって、有床診療所
の地位の確立と、また経営の安定に向かって努力してまいりたいと思っている次第であります。
この総会が、実りある会になりますことを心から期待して挨拶とさせて頂きます。
一6一
祝辞(要旨)
日本医師会会長 坪井栄孝
日本医師会の坪井でございます。
本日は、第16回全国有床診療所連絡協議会の総会が和歌山の地で、この様に盛大に開催され、
全国から310余名の会員が集って来られるそうでありますが、日医を代表して一言お祝いを申し上
げます。この会が始って16回とのことですが、私が日医を担当して以来、毎回出席させていただいて
います。また出ないと心配でたまらない会であることは間違いありません。
先般、日医の中に有床診療所に関する検討委員会を作らせてもらいました。これは、現在のように
国民の医療に対する眼が厳しくなっている時、有床診療所の立場も暖昧なままでは許されず、はっきり
させておかなくてはなりません。日本の有床診療所は他の国に見られない特有なものであります。
だからこそ今、どうあるべきかを世に問い、先送りしないで日医の役員共々確立しなくてはなりません。
厚労省がどう考えているのか、今までのしきたりに閉じこもっていては、先に進みません。我々の手で
打ち壊して、新しい概念を作り上げない限り、国民の理解は得られません。有床診療所が抱えている
緊急を要することに対しては、委員会の中でもんでいただき、私自身も厚労省と話合ってやって行き
たいと思います。また遠い先のビジョンに対しても今から主張し、改革に手をっけて行かねぱなりません。
自分達が専門の立場で主張し、いい医療を提供するようにする。先生方は、お世辞ではなく大きな
パートを握っているのであります。御自身の責任を自覚して御活躍していただきたい。
有床診療所協議会は、私にとって気になる会であると言いましたが、参加するたびに内藤会長か
ら小言をいただき、また後の懇親会では、その倍ぐらいの小言を頂戴する。だからと言って来たくなく
なる会ではありません。どうやら私自身のDNAの中にすり込まれていると言ってもよろしいかと思い
ます。どうぞ一緒になって今回この機会を逃しては、もうチャンスは巡って来ません。一気に解決に
向いたい。壇上でこれだけのことを言うには、よほどの勇気と確信がないと言えることではありません。
私の出来ることに対しては、全責任をもってやって行きます。ただ一人で出来ることではないので、
皆様方と共にやって行きたいと思います。
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日本医師会
会長坪井栄孝殿
平成15年8月2日
全国有床診療所連絡協議会
会長 内藤哲夫
要望書
1.医療法13条の患者収容時間制限条項の撤廃を求める。
会長確約でもある本条項撤廃は、今後の有床診療所の存続に不可欠であり、その実現に全力を
尽されるよう、日医に強く要望する。
2.有床診療所の入院基本料の早急な是正を求める。
「一般病床」の入院基本料は、長年に亘って低く設定されたまま放置されている。「療養病床」に
っいても、構造設備・人員配置ともに病院とほぼ同一基準であるにも拘わらず病院との格差は
極めて大きい。
3.次期医療法改定にあたっては、「日医小規模入院施設検討委員会報告書」を基軸とした
制度の法制化を求める。
4.医学的根拠に基づいた診療報酬体系の確立を求める。
現行の診療報酬体系は、改定・修正を重ねた結果、今や医学とは甚だしく乖離し、医療現場の
常識では理解困難な複雑・不合理なものとなってしまった。医療者にも受療者にも分り易く納得
の行く、新たな診療報酬体系を確立すべきである。
一8一
有床診療所の諸問題について
「主として医療制度改革について」(要旨)
日本医師会副会長 糸氏英吉
私が有床診療所にかかわって来て、もう10年以上になる。それなのになお今も問題を
抱えているとはよくない。もうそろそろ決着をっける時期である。
有床診療所の抱える問題としては、医療法13条の48時間制限の撤廃が挙げられる。
この法律は、昭和23年に制定以来、二度の改定を受けているが、基本はまだ続いており、
今でも48時間を超す入院は法に反することになり、いかに努力規定とはいえこんなものが
あってよいはずがない。従って、これを無条件で廃止せよということを言っておられるわけで、
無条件が一番よいのだが、ここに厚労省が出してきた解説書というものがある。その有床
診療所に関するくだりは、非常に独断的なもので、今時こんなことを言うと笑われるくらい
デタラメなものと思っている。従って、まずこの辺から崩して行かなければならない。
有床診療所に基準として、どのくらいまでなら認めてよいのか。まず、構造設備については、
このままでほとんど問題はないだろう。問題は人員配置である。私の個人的な見解を述べる
なら、一人でも入院させれぱ病院であると考えているので、いい加減にしてよいとは考えてい
ない。患者の急変にも何時でも対応できるようにしておかなくてはならないし、病床の数も
含めて見直しをして、厚労省と折衝しなくてはならない。
最後に、有床診療所の活性化に向けてどうすればよいかについて述べてみる。
まず小規模であるが故の強み、やり易さがあるので、それを有意義に使う。次に入院機能の
明示をする。一般救急に対する対応。これは地方では、なくてはならないものであるし、整形・
外科・眼科などの専門医としての位置づけをはっきりさせる。或は患者の身近にある療養病床
、これらの特徴を明示してやって行かなくてはならない。また、かかりっけ医としての機能を
持っていて、何でも相談にのるというのも正に大きいメリットである。
また医療安全と医療の質の向上に努めることも勿論大切なことである。
一9一
「主として診療報酬改定について」(要旨)
日本医師会副会長 青柳 俊
昨年4月から中医協を担当している。最悪の時期に任命されたわけで、1年数ケ月皆様から
たたかれ、こずかれて来た。これからまた来年に向けて困難な作業をやって行かなくてはならない。
まず昨年4月の診療報酬マイナス改定の影響であるが、病院よりも診療所、大病院よりも小病院、
入院より外来に大きい影響が出ていることが判明した。こういうことを踏まえてプライマリケアに重点
を置くという一文を人れさせることが出来た。
診療報酬改定実施までの流れをスライドで示す。中医協では、@医療機関の実態調査A薬価調査
B治療材料費調査をして、そののち改定の論議が始まる。
診療報酬の改定に際し、その配分が適正でない、改定へのプロセスが不透明であるとの批判を
受けたが、そのことも充分配慮してやって行きたい。改定要望の細かい中身については、日医の
診療報酬検討委員会で内藤先生からの要望などもまとめ、それをもとに望みたい。
有床診療所の医療費を見てみると、横ばいから下降の道を辿っている。それに比べて病院の
医療費は、結構伸びている。多くの項目が包括化されて、入院費に含まれてしまったこと、引き下げ
の影響などによるものである。
この点を大きく主張したいところであるが、医療費実態調査の結果が良く出ているので強く主張
しにくい所がある。実態調査に応じた有床診療所は余裕のある所で、本当に悪い所は実態調査
する余裕もないということが考えられるので、その辺を主張したい。
24兆円が医療費に回されているというが、その48%は医療にまつわる会社にそっくり回され、
50%は人件費になり、僅か2%が医療機関に残り、それから税金を支払っているという事実を
行政及び一般の人びとにも知ってほしい。
特別講演
「
社会保障は国家安全保障」(要旨)
日本医師会会長 坪井 栄孝
国民の安全保障が脅威にさらされている時こそ、政府の出番である。国家的危機に立ち向かう
リーダーシップのために国民は税金を払っているからだ。もともとわが国の国家安全保障はやや
いびつである。歴史的経緯から国土の安全保障・国防にっいてはアメリカ任せにせざるを得ない。
その分、政府は国民に対する安全保障、すなわち社会保障に十分に配慮しないと、わが国は
国民的統合失調症の状態となりかねない。つまり、国防もアメリカン、社会保障もアメリカンでは、
この国のアイデンティティーは保たれないということである。
このような危機的状況にある日本を救うためには、国民に安心感を与える政策が極めて重要
であると考えている。安心感を醸成することによって将来の不安を取り除き、社会に伸びやかな
雰囲気を作る必要がある。そのためには破壊された"聖域の回復"・っまり国民に安全保障を
確約することが必要である。社会保障をセーフティネットに繋ぎ、矮小化せず、国家安全保障戦略
の一環として、国家事業として位置づけなければならない。社会保障が存在する究極の目的は、
「就業」、っまり個々の国民が心身ともに健康で働くことを通じて、生き生きとした社会や経済
システム作りに貢献することにある。この「就業」を支えるのが・「医療」「介護」「教育」「年金」
「雇用保険」「生活保護」といった社会保障制度である。
この世に生を受けて、医療によって生命の安全保障を得つつ、教育によって働くための能力を
培っていくことになる。不幸にして、一時的に失業という状況に陥った時の助けになるのが雇用
保険である。恒常的な失業状態に陥ると生活保護ということになる。「就業」を若い人に譲り渡す
対価が年金である。年金で老後の生計を維持しっつ、死を迎えるための準備をすることになる。
生の最終段階を支援するのが介護ということになる。このような人のライフサイクルを支える社会
の共通資本が社会保障制度である。この共通資本は国の債務によって常に整備されなければ
ならないというのが、私の主張で
一11一
ある。
社会保障は国民がより豊かに生き、暮らし、働くことができるために常に進化していく積極的な
システムである。
医療分野でいえば戦後の感染症の時代から・生活習慣病の時代・高齢者医療の時代、これから
は予防医療の時代へと入っていくわけだが、それに合わせて社会保障としての医療は進化し、
世界一の長寿国、世界最低の乳幼児死亡率の国という地位を守っている。個別では問題がある
ことを否定しないが、このような生の活動を担保できるシステムが粛々と日本国中で作動している
ことは、日本の国家的価値を高めることと、良質な人材の提供に役立っていると断言してもいいの
ではなかろうか。
このように社会保障は国力の維持強化を図る国家的最重要事業であり、社会共通資本として、
医療・介護・年金・教育・雇用等のコンビネーションを図りっっ、戦略的投資が行われなければなら
ない。
このような社会保障に対する基本的な認識の上に立てば、医療を支える当事者が国民に対して
果たすべき責任は、以下の3項目に整理される。
@国民皆保険制度を国民に対する安全保障と認識して、さらに充実・整備・強化を国に強く求め
ていくこと。
A命の平等を担保するために"いっでも、どこでも・誰でも"医師にかかれる国民の権利を確保
すること。
B自己負担は「受難者負担」であることから、上限でも2割までとすること。
将来的には自己負担ゼロとすること。
このことは市場原理主義者からの批判や非難に耐えつつ、主張し続けていくべきである。
第3回有床診療所に関する検討委員会
平成15年7月31日
日本医師会館
審議
(1)48時間規制の撤廃を求める場合の条件にっいて
(2)診療報酬上の評価を求める上での考え方にっいて
(3)新たな施設体系の検討について
(4)次回以降委員会日程調整
(5)その他
(星常任理事)
今までの委員会で色々出た議論の整理をしたうえで、可能性のあることをあぶり出していただ
きたい。前回の検討委員会で無条件撤廃には応じられないということは明らかである。
だが条件次第では議論の余地はある。
(大道委員長)
48時間規制の撤廃にっいて審議を進めて行くうえで、もう少し視野を広げてやってはどうか。
小林委員からFAXをいただいた。
(柵木委員)
13条の条文内容の変更というのも選択肢となる。勿論これの完全撤廃がベストであるのは
当然であるが、無条件撤廃がどうしてもダメだ、というのであれぱ施設側の種々の条件を交渉
するよりも、13条を実質的に死文化する方向で交渉するといった選択肢もあるのではないか。
例えば48時間を超えて収容しないようにする、の「48時間」を「長期間にわたって」に変えると
いったように。
一13一
(内藤委貫)
条文の中身を変えると13条は残ったままになり、生きてしまう。13条というのは診療所の
患者人院時間の制限だけであるので、完全撤廃に向わないといけない。相手が何か言ってきた
ときに、それに対応する間題を検討する必要はあるが、こちらから言うことはない。
(大道委員長)
別の条文になるというのは一っの選択肢である。
(伊藤委員)
榮畑課長の見解は厚生労働省の正式なものか、確認しておきたい。
(田那村委員)
厚労省が入院施設でないと言うことが非常に問題である。医療法の第1条の5の2には診療所は
確かに入院施設だと書いてある。そこのところが厚労省の解釈と我々の見解とが違っているのだ。
その辺をクリアーしないといけない。昭和23年に作られた医療法解説書が、55年経った現在でも、
申し送りで代々省内で使われていること事態、おかしなことである。これを日医が厚労省に対して
申し入れをして、とんでもないことだと言って48時間撤廃という事をやっていくのも一っの方法では
ないか。
(大道委員長)
厚労省には公権力もあり解釈権もあるのだから、まあ……。
(藤野委員)
第1回の議事録を見ると、交渉そのものは担当役員にまかせてもらうが、誤解や矛盾が生じない
ため、日医側の立場で有診の中から代表者に同席してもらうと大道先生は言
一一I4・一一
われているし、代議員会での坪井会長の発言をそのまま受け取ると、当然、坪井会長が先頭に
立って48時間を無条件で撤廃せよと星常任理事とともに申し入れ、我々はオブザーバーとして
参加するものと思っていた。にも拘わらず、あの会議でしゃべったのは我々有診代表者3人だけ
であった。その中で、榮畑課長からそれは受け入れられないと言われ、ダメでしたということでは
全く何も進展しないので、「受け入れられないではなく撤廃せよ!これは日医の意見だ」と、
坪井会長から強く申し入れをして、それでもダメなら何故ダメなのかというところから、次の論議が
始まるのではないか。
(海江田委員)
この委員会の結果は日医常任理事会の了解は取れているのか。今までの星常任理事の言動は
日本医師会の意向としてやったことか。
(徳永委員)
我々の審議の内容は常任理事会に報告しているのか。
(星常任理事
)常任理事会に報告はしていない。自分に全てをまかされているのであるから、私を窓口として
厚生労働省に話す場を設定したのである。
(徳永委員)
先生の所で、この話し合いの内容がストップしているとは、大変残念である。
(海江田委員)
どこの医師会であっても、委員会でのやり取りは理事会に報告し、論議するのが当然ではないか。
常任理事会でよく説明して、日医の意見だからという立場で厚労省と交渉することで、大分違う
のではないか。
一15一
(星常任理事)
日医の交渉はほとんどの場合、まかされた常任理事の判断ですることになっている。
文書によってやり取りすることも可能であるが、危険だからしなかったのだ。
(美川委員)
あれは今でも正式な申し入れではないと思っている。先生が日医の代表として会長
の代わりに13条撤廃について申し入れをされるのであれば、理由にっいても先生
ご自身が説明しなくてはいけない話だ。立会人に言わせるのはおかしい。
(大遺委員長)
問題が大きいので,先生方の思いは会長に全部伝わっていると思いますよ。
(内藤委員)
実はこの間、厚労省の篠崎医政局長にもお会いした。その時、省内に法改正の
委員会を作ると言っていた。
(大岩委員)
篠崎局長の話しでは、既に今年の4月の時点で坪丼会長から電話は頂いてお
ります。だから近いうちに省内に委員会を作ると言っていた。
(星常任理事)
前回の打合せ会の時と同じことを言っても通らない。医療法13条だけが存在して
いるのではない。他の法とのバランスの問題を言っているのだから、それを解決
しないことには交渉にならない。
(大岩委員)
医療法13条の撤廃といっても、全部取り払って白紙にするということではない。今の
一16一
実情にあった法文に書きかえてくれと言っているのである。その時は先ず、有床診療所
の定義を入れる。次には、有床診療所の特徴を書き、1人できちんと見れる施設である
ということを人れる。ただ有床診療所は各科によって大変違うので、その科によって
必要とする構造設備を備えると入れる。少なくとも、今後数十年、場合によっては
50年間もつ法律としなければならない。
(大道委員長)
大岩先生の言われるのは、少し規制はかけてもよいと言うことか。また、運用規定を
定めるのも一っの方法である。それから今日も出たが、13条は残してその除外項目
を増やすという選択肢もある。小規模入院施設の考えはどうですか、これは第3の
選択肢となる。こう言ったことが本日の結論になると思うが。
(星常任理事)
医療法13条は残してくれという人もいるはずだ。これを除くには、条件は必ず入る
だろう。その条件をクリアーできない人がいることも考えて行かないといけない。
(大道委員長)
9月3日に第2回目の厚生労働省との話合いをやってもらい、第4回目の有床診療所
に関する検討委員会は10月2日の予定とする。
一17一
2003.9.16