有床診療所の利用について

福岡有床診療所協議会会長  大岩 俊夫
     
身近で最も気軽に利用していただける入院施設と言えば、さしづめ
有床診療所が一番該当するものであろう。
有床診療所には、一般病床と療養病床とがあり、療養病床は発足
後すでに4年を経過し住民の近くにあって気軽に入院できる施設とし
て定着し、御利用いただいているところである。
また有床診療所には、診療所老人医療管理料(いわゆるショートステイ)
と呼ばれる病床を有している所が多くあり、ここには在宅治療を受けて
いる老人を、一時預かったり、短い日数の入院ですむ眼科手術後のケ
アーなど、様々な利用法がある。ご近所の無床の先生ともうまくタイアップ
してやっていただくとよいと思う。
ところで有床診療所の一般病床は、急性期の患者を収容するためのも
のであるが、長年月にわたり私達を圧迫して来た医療法13条(48時間
を超えて患者を収容してはならない)という規定が撤廃されそうな気配である。
医療法13条は昭和23年連合軍の占領下、GHQの指示により制定され
たものであるが、当時でさえ実行の不可能な法であったため、昭和29年
改訂され、罰則なしの努力規定となっていた。しかしこれを厳密に運用さ
れれば、即有床診療所の一般病床への患者収容は認められなくなるだけ
に、私達有床診療所連絡協議会は、生存をかけてこの13条撤廃運動に
取り組んでいるのである。
一般に有床診療所の医師は、大学や大病院の専門科で医長などを務め
たうえで開業している人が多く、従ってその専門領域では大変造詣が深く
、うまく治療してくれるものである。それに対して、大病院では多くの科を
擁していて、多くの医師が協力して治療にあたる訳で、組織医療を要する
ような病気では、大病院を受診してもらわなければならない。つまり大病院
と有床診療所とでは病気の種類により、或いは合併症の有無などにより、
すみ分けが必要なのである。
とは言うものの、患者自身にはそんなことが分る訳がないから、取りあえず
自分の病気の専門科と思われる身近な診療所、出来ればそれも有床診療所
を受診することを勧めたいと思う。実力がある有床診療所の院長であれば、
病状を聴取し、検査をしてみれば、おおよそ自分の施設で対応可能な患者か
どうか判断できる筈である。又すぐ診断がつかなくても、2〜3日入院してもら
って検査を進めたり、経過をみれば判明するものであり、必要ならその病気を
最もうまく治療ができる病院へ紹介することも可能である。今までその判断が
あまり狂わず、うまく機能してきているからこそ有床診療所には大きな事故が
少ないのではないかと考えられる。
一般に大病院に比べて有床診療所は、軽自動車にたとえられる。大型の車が
入れないような狭い路地にも軽なら入る。いつでもどこでも利用し易く費用も
少なくてすむ。白分の所で対応不能な患者は、何時でも一番ふさわしい大病院
に紹介してもらえる。これは、患者にとっても大きな福音である。痔や虫垂炎や
ヘルニアなどの病気で大病院に行くのは、ナンセンスである。それに対し、
大動脈瘤・心臓の手術・移植などは多くの医師によるチーム医療が必要である
ことは云うまでもない。先ず身近な診療所、出来ればそれも有床診療所で診療
を受け、必要であれば、的確な入院先を決めてもらうのが一番効率的で合理的
な医療の受け方である。

2003.9.10